
スマートフォンの5G通信は、超高速かつ低遅延であることが大きな魅力です。
しかし実際に使ってみると「速度は速いが、つながりにくい」「屋内では電波が弱い」と感じる場面も少なくありません。
その理由のひとつが、電波の回折特性です。
電波は光と同じく波の性質を持ちますが、波長によって障害物を越える能力が変わります。
本記事では、5G電波が遮られやすい物理的な背景をわかりやすく解説し、通信改善のための実用的な方法も紹介していきます。
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電波の基本|周波数と波長の関係

電波とは、周波数3Hzから300GHzの範囲にある電磁波のことです。
通信に使われる電波は、周波数と波長の関係によって性質が大きく変わります。
- 周波数が低い(数百MHz帯) → 波長が長い → 遠くまで届きやすい・障害物を回り込みやすい
- 周波数が高い(数GHz〜数十GHz帯) → 波長が短い → 高速通信可能だが障害物に弱い
例えば4Gでは700〜900MHz帯(波長約30〜40cm)も利用されますが、5Gでは3.7GHz帯(波長約8cm)や28GHz帯(ミリ波、波長約1cm)が使われます。
この違いが、5Gの「速いが届きにくい」という特性の理由です。
📊【表:4Gと5Gの周波数比較】
| 通信方式 | 主な周波数帯 | 波長の目安 | 特性 |
| 4G LTE | 700〜900MHz | 30〜40cm | 遠距離・建物越えに強い |
| 5G Sub6 | 3.7GHz帯 | 約8cm | 高速・広帯域だが遮蔽に弱い |
| 5G ミリ波 | 28GHz帯 | 約1cm | 超高速だが直進性が強く遮られやすい |
電波の回折とは?障害物を越える仕組み

「回折(かいせつ)」とは、波が障害物の端を回り込む現象を指します。
光の波でも見られる現象で、例えば狭いスリットに光を通すと、直進せずに広がって見えるのも回折の一例です。
電波も同じく波の性質を持つため、建物や山などに当たると、完全に遮られるのではなく、一部は回り込んで届きます。
この「回折効果」によって、見通しが効かない場所でもある程度電波が届くのです。
ただし、波長が短いほど回折は弱くなるという特徴があります。
つまり5Gのような高周波の電波は、建物や壁にぶつかった際にほとんど回り込めず、結果として「つながりにくい」と感じやすいのです。
なぜ5Gは遮られやすいのか?
5Gの電波が遮られやすい最大の理由は、周波数が高く波長が短いため回折性が弱いことにあります。
例えば、4Gの低周波帯(700〜900MHz)は波長が30cm前後あり、建物の角や壁を回り込んで電波が届きやすい特性があります。
一方で5GのSub6帯(3.7GHz)は波長が約8cm、さらにミリ波帯(28GHz)はわずか1cm前後と非常に短く、直進性が強くなります。
その結果、障害物に当たるとほとんど回折せず、影の部分には電波が届きにくくなるのです。
📊【比較表:4Gと5Gの電波特性】
| 特性 | 4G(700〜900MHz帯) | 5G Sub6(3.7GHz帯) | 5Gミリ波(28GHz帯) |
| 波長 | 約30〜40cm | 約8cm | 約1cm |
| 回折性 | 強い | 弱い | ほぼない |
| 通信速度 | 数百Mbps | 数Gbps | 10Gbps以上 |
| 遮蔽物耐性 | 高い | 中程度 | 低い |
つまり、5Gの高速通信は「見通しの良い場所」でこそ最大限に発揮されるのです。
回折以外の要因|反射・吸収・透過

5G電波が届きにくい原因は、回折性の弱さだけではありません。
建物の材質や周囲の環境によっても大きな影響を受けます。
- 反射
電波は金属やコンクリートに当たると反射します。反射した電波が直接波と干渉し、通信品質を不安定にすることがあります。 - 吸収
電波は壁材や人体、水分を多く含む物体に吸収されやすい性質があります。特に5Gの高周波は吸収されやすく、雨や木の葉でも減衰が大きくなります。 - 透過
一部の素材(ガラスや薄い木材など)は電波を透過しますが、5Gは透過性が低いため、屋内利用時に電波が弱まります。
こうした要因が重なることで、5Gは「高速だが届きにくい」という特性が強調されるのです。
日常生活での対策と改善策

5Gの電波は障害物に弱いため、快適に通信を利用するには工夫が必要です。
特に屋内では電波が弱くなりやすいため、以下の方法が有効です。
- Wi-Fiルーターの最適配置
壁や家具で遮られない、家の中心部や高い位置に設置すると通信範囲が広がります。 - Wi-Fi中継器・メッシュWi-Fiの活用
広い住宅や2階建て以上の建物では、メッシュWi-Fiを導入することで電波が隅々まで届きやすくなります。 - 屋外アンテナ・フェムトセル
携帯キャリアが提供する小型基地局(フェムトセル)を設置すると、室内でも5Gの電波を安定して利用できます。
今後の展望|6G・ミリ波通信はどうなる?

5Gの次世代として、すでに6Gの研究開発が進められています。
6Gでは100GHzを超えるテラヘルツ帯の利用も想定されており、理論上は超高速・超低遅延の通信が実現可能です。
しかし、周波数がさらに高くなることで直進性が強まり、回折による回り込みがほとんど期待できなくなります。そのため、以下の技術が重要になります。
- 基地局の高密度化:小型基地局を街中や建物内に多数配置し、電波の死角をなくす
- ビームフォーミング:アンテナが電波を狙った方向に集中して送る技術
- 再構成可能なインテリジェント反射板(RIS):建物の壁などを電波反射用に制御して、回折に代わるカバーを実現
これらの技術によって、6G時代には「どこでもつながる超高速通信」が目標とされています。
まとめ
5Gの電波が遮られやすいのは、高周波で波長が短いため回折性が弱いからです。
4Gのように建物を回り込む力が小さいため、壁や窓で簡単に減衰してしまいます。
さらに、反射や吸収といった要因も重なり、屋内では通信が不安定になりやすいのです。
しかし、Wi-Fiルーターの配置改善やメッシュWi-Fiの導入、さらにはキャリア提供の小型基地局を活用することで、多くの環境で安定した高速通信を得られます。
今後の6G時代には、回折の弱点を補う技術革新(ビームフォーミングやインテリジェント反射板)が進み、より快適な無線通信が期待されています。
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参考情報一覧
- 総務省「第5世代移動通信システム(5G)の今」
国立国会図書館記録(調査・立法考査局)PDF資料 - 総務省「第5世代移動通信システム(5G)の早期展開に向けた取組」
講演・解説資料 - NTTドコモ「5Gとは?特長や移行における注意点を解説」
商用視点から5Gの特性を解説したWeb記事 - NTTドコモ「5G(第5世代通信)とは?意味・定義」
用語解説ページ - GO!5G(ローカル5G基本情報)
地域利用型5Gの概要説明サイト - “Embracing Diffraction: A Paradigm Shift in Wireless Sensing and Communication”
電波回折の意義を再評価する学術論文 - “Wireless Communications Through Reconfigurable Intelligent Surfaces”
再構成可能な反射面(IRS)を使った無線通信制御に関する論文 - “Terahertz Multi-User Massive MIMO with Intelligent Reflecting Surface: Beam Training and Hybrid Beamforming”
テラヘルツ波・高周波通信での回折性・減衰性に関する論文

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